あの頃から比べると私はずいぶん戦闘になれたと思う。
ほんのちょびっとだけ。
ヴァンとも前より良く話すようになったし、ガイラルディア様もよくお話になるようになった。
何故こんなしゃべり方かというと、職業病だ。
「畏まりました。」「いってらっしゃいませ。」等、色々特訓させられた。
もちろん誰だかは言えないが。
ルインさんももちろん傍に居る。可愛らしい猫のまんまで。
私はその日お使いに出た。簡単な仕事で少し離れた所に預かったものを渡すだけの仕事。
短くて2,3日、長くて1週間ということだった。
ルインさんをかばんの中に入れて、それから仲のいいメイド仲間と世間話をして、ガルディオス家を離れた。
私にしてみればこの世界に来てはじめての旅行だった。
目的地はケテグブルグ、雪国らしい。
私は生まれてから一度も雪国に行ったことが無い。中一のときのスキー旅行、インフルエンザで行けなかったのだ。だから凄く嬉しかった。
港に着くと、嵐で今日は船が出れないらしい。
しょうがない、と私は今までの給料で宿に泊まった。屋敷の執事はある程度の資金を出してくれたが、とりあえず今は私のお金があるのでそれを使った。
「、明日は船に乗るのか?」
「うん。そうだよ〜。もしかして海嫌い?」
私がニヤリと笑いながら思わず聞いていた。
「いや、そんなことはないんだが、揺れが嫌いだぞ」
「何だ船のほうか。」
「船が嫌いで何が悪いか」
「だって乗り物全般平気そう。」
「っ偏見だ!俺は揺れるものはほとんど嫌いだぞ」
ルインは尻尾をゆらゆらさせながら言った。
ちょっとしたお使い。
だけど嫌な予感もしたんだ。